夏の足湯
- Masumi Nakahara
- 2017年6月2日
- 読了時間: 2分
真夏日に私とYくんは足湯につかっていた。
「暑いね」と私は言った。
Yくんはアイスキャンディを買ってくれた。
「何だかうまくいかないね」
私とYくんは種類は違えども同じ重さの悩みを抱えていた。
わたしのは雲のようなもので、
Yくんのは弾丸のようなものだった。
まったく違うけれど秤に置けばちょうど同じ重さだった。
「革命を起こすには私の精神は弱すぎる。
だけど傍観するには頭がよすぎる」
「暇だね」
とYくんは言った。
私の話なんて何も聞いていない。
「僕の鼻があと数ミリ高ければ世界は変わるだろうか?」
今のままでも十分ハンサムだよ、と私は答える。
だけどYくんは鼻にプレートを入れるか、ヒアルロン酸を打つかでとても悩んでいた。
「しかし、暑いね」
と、私たちは言い合った。
アイスキャンディはとっくに食べ終えていて、
私たちは行くところがなかった。
二人でTシャツの袖をまくって、
川から不規則に送られてくる風を何時間も待っていた。
私は世界を変えることを
Yくんは世界が変わることを
夢見ていた。
そのうち飴売爺爺の声が聞こえてきて、
真っ赤なスモモの飴を売りつけてくる。
甘酸っぱいその味は、真っ赤な革命そのものだ。
もうすぐ夕暮れがやってくる。
私たちは真っ赤な中にはいられない。
「もう、帰ろうか」
夕暮れから逃げるようにその場から立ち去る。



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