オオバコ
- Masumi Nakahara
- 2017年5月25日
- 読了時間: 2分
牛車や馬車が通る轍に生え
どんな重みの踏みつけにも堪えうることから
車前という名前がつくほどの植物
ならぬ堪忍するが堪忍
などという花言葉までつくほど踏みつけに強い植物
だけど
高く伸びる性質がないので
踏みつけが弱い場所では
他の植物に負けてしまう
オオバコにはそこでしか生きられない場所というものがあって、
それは牛車の車輪の下であり、
蹄の下であり、この世のすべての重量の下である。
堪へ難きを堪へ、忍ひ難きを忍ひ
以て万世の爲に太平を開かむと欲す
オオバコの宿命たるや
柔らかい土壌で
太陽の光をたくさん浴び、
時に肥料をもらい、
朝夕には水を浴び、
自由奔放に葉を伸ばし、
受粉し、
真っ赤な実をつけるトマト
オオバコとは大違いである
しかし、その繁殖の源である実を食べられてしまう運命
私はトマトを育て、
それを食べる
そして、オオバコは踏みつけられ、
牛は何かを運び続け、
最後には食べられてしまう
トマトを食べるのも牛を食べるのも私だ
オオバコが車輪の下でしか生きられないように
私も食べずには生きられないのだ
せめて
食べ難きを食べ、空腹の忍ひ難きを忍ひ
以て万世の爲に太平を開かむと欲す
それは一日に最小限の
小麦の外皮を食べるようなことで
世界を平和に導くことである
なんというかグラノーラのようなしゃれたものをかじり、
ぼんやりと本を読み、
誰の思想の邪魔をしないようにあいまいなことだけをつぶやき続ける
そして叙庵と名付けた小さな場所で
何か小さな物語を書こう
例えば、オオバコの物語を
小さな子らがオオバコ相撲をしているのを見つけて
私はそんなことを1日中考えていた



コメント