top of page

Just push play

  • 執筆者の写真: Masumi Nakahara
    Masumi Nakahara
  • 2017年4月30日
  • 読了時間: 2分

午睡から目が覚めると、もう夕方になっていて、 嘘みたいな夢みたいな桃色の空。

家を出て、自転車に乗る。 誰かが起こした癇癪のように突然降りだす雨。 私は構わず自転車をこぐ。 激しい雨。 横殴りに降りつけ、頬にやさしく噛みつく。

どこにむかっているのだろう。

わからないままペダルをこいでいた。

濡れたシャツが肌にまとわりつく。 体温と全く同じ温度の雨。 まるで羊水と同じ。

桃色の町。 真っ赤な自転車で走る私。 咲き誇るハナミズキ。 垂れ下がる藤の花。 そして生まれたばかりの新緑の葉。

美しく激しい雨は突然止んだ。

そして、私は気が付いた。

世界は新しく更新されたのだ。

羊水のような雨を浴びて、私たちは生まれ変わったのだ。

太陽は赤く燃え、 若い女の秘密粘膜のような色をした空から羊水は降ってきて、 すべてのチリやほこりを洗い流し、 世界を生まれ変わらせた。

花の色は鮮やかに 新緑は生命の総代として 世界はある日の夕方突然祝福で満たされた!

私は自転車をこぐ。 行く当てもなく。 新世界を点検するように。 花や葉や実を隈なく鑑賞した。

すべてのものが違って見えた。

それは形而上的なことではなく、

ただ実存のままに起きたことだった。

そう、世界は愛や慈悲で満たされたわけではなかった。 ただ鮮やかな色で満たされていた。

悲しい理不尽な事件は依然として、ありありと存在していた。 ただその悲しさがさらに発色しただけだった。

だれも気が付いていないかもしれない。 世界の色彩が鮮やかさを増したことに。

そして、私もそれを証明できない。 世界の鮮やかさが昨日までいくつで、それが今いくつになったのか、そういった数値を持ち合わせていないからだ。

だけど私は思う。 世界の鮮やかさが増した分、 その分だけ芸術家も増えるんだってことを。

そして、それがおそらく唯一の証明となるだろう。

世界の彩度が増したことの証明に。

こんにちは! あたらしい世界! 私は今まで見たこともないような大きくてあたらしいものを作り上げるだろう。 そしてそれをあなたにお見せしよう。 勿体ぶらずに気前よく、私はそのとてつもなく大きくてあたらしいものをあなたにお見せしよう。

 
 
 

コメント


特集記事
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
最新記事
アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square

© MsMacra

  • facebook-square
  • Flickr Black Square
  • Twitter Square
  • Pinterest Black Square
bottom of page