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たまご

  • 執筆者の写真: Masumi Nakahara
    Masumi Nakahara
  • 2017年4月11日
  • 読了時間: 2分

何かに反抗しているように

何かのデモに参加しているように

何か大きなものに立ちむかっているように

何かの散弾銃のように

まるで武器のように

あるいは刻々と落ちる砂時計のように

止めどなく押し流される意志のように

押し流されて丸くなる石のように

たまごを消費していた

たまごを持っていた

私は生まれた時から繁殖用の卵を持っていた

もちろん私だけじゃない

あなたもみんな

体を動かすたび

たまごはぼろぼろとこぼれていった

カステラのように

思い出のように

200万個あったたまごは日に日に減っていった

ただ息をするだけで

ただセックスをするだけで

様々な人やテレビが私に情報を注いでいった

たまごのことや政治のこと

弱者のことや鰯のことやおたまじゃくしのことなど

私は怒っていた

そして焦っていた

生きているだけでたまごを消費し続けていた

生命を消費し続けていた

あるとき誰かが夢の中で言った

「もうタイムリミット」なんだと。

それから3回寝て、

私は妊娠したいと結論を出した。

たまごやトマトやその類の柔らかいものを壁にぶつける生活をしていた

そういうことで人生における意義や土台を作りあげようとしていた

弱い誰かを助けたり、儲け話を誰かに教えたり、

難民を助けたり、拿捕したり、救助したり。

だけど、あるとき誰かが夢の中で言った。

「子供がある人生とない人生があるとして、

3日のうちにどちらかを選んで、

1年のうちに妊娠しなさい」

私にとって妊娠を選ぶことは、

理不尽な親方に土下座して譲ってもらった陶磁器を

例えば古伊万里とか古天明平蜘蛛なんかを

たたき割って丸裸になるようなものだった

勇気がいたけど、踏み出さないわけにはいかなかった

だけどそうでしょう

あなたもわたしも

そして、私はかの土地へむかった

魚を詰める旅

はじまりの土地へ

 
 
 

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