プラスドライバー
- Masumi Nakahara
- 2017年4月3日
- 読了時間: 3分

朝方の夜泣きで起こされ、そのまま怒涛の1日が始まる。
目覚まし時計でここ数年起きたことはない。
最愛の子どもの泣き声がアラームなんて贅沢なんだろう。
まだまだスヌーズ中の子どもをあやしながら洗濯を始める。
1日に何回も着替えをする子どもたちがいる生活。
小さな間隔のピンチの洗濯物干しに色とりどりの洋服。
休日の午後にはためくそれらを見ると愛おしさで涙が出る。
ぎっしりの色とりどりの洗濯物は幸せの国の旗のようだ。
毎朝、6時55分の「あさがきた」
娘が2歳の頃から欠かさずに見ている。
朝から幸せのダンスが見られる生活。
朝から子どもと笑い転げられる生活。
朝から元気をもらえる幸せ。
朝ごはんを用意している途中で1歳がうんちをする。
大泣きしているのでおむつを替える。
3歳は自分の朝ごはんは?と怒っている。
1歳が便秘症じゃなくてよかった。
3歳が自分の意見を主張できる子で頼もしい。
3歳がごはんを食べている間に髪をとかしてあげる。
やわらかな絹のような髪の毛をとかすと、
朝日が透けて見える。
振り返って3歳が
「三つ編みにしてね」
と言う。
3年前、私がまだママじゃなかった頃、
彼女がまだクリオネみたいな幼生だった頃、
超音波で初めて動く彼女を見た時、
人生で最大の感動を覚えたことを思い出す。
そして、その幼生がいつか成長して、
私のことを「ママ」と呼ぶ日を待ちわびていたことを思い出す。
今では、
「ママ、ママ」と連呼されるとうるさいな、と思うことが多々ある。
時々、プラスドライバーを持つと、
私は全く贅沢にその頃の気持ちを忘れていることを思い出す。
怒ってばかりいてごめんね。
今朝、
二人の子供を抱いて泣いた。
どうして、こんな幸せな日々に感謝できないんだろう。
大変だ、大変だって言って、
子どもたちをお荷物のように扱って、
ひとりだったらどんなに楽で素晴らしいだろう、なんて
どうして一瞬でも思ってしまったんだろう。
彼らに今世紀最大の孤独から救ってもらえたのに、
彼らを失えばそれ以上の孤独に襲われるのに。
母親たちはマイナスドライバーとプラスドライバーを持っている。
後悔と感謝の狭間を行き来している。
子どもを叱ったり、抱きしめたり。
自分自身が未熟なのに、
どうして正しいことが教えられるだろうと、
後ろめたさの中で子を育てている。
プラスドライバーを持ったとき、
すべてが祝福に思えると、
母親たちは一斉に懺悔をはじめるだろう。
心に一点の曇りもない母親なんていない。
誰もがみな聖母になどなれないのだ。
プラスドライバーを握り、
自分の祝福された日々を感じられたのなら、
その時には素直に感謝をすればいい。
子どもたちは許してくれるだろう。
だって、彼らは母親が大好きなのだ。



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